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ピアニスト水上裕子 エッセイ

瀋陽日記③

沙羅は泣き続ける・・・。ここでやっていける自信がないと・・・。

「でもさあ、ここまで来ちゃったんだから、あなたもそろそろ腹を決めないと。意外としつこい性格だね」

「ママはいいよね。私をうばすて山に捨ててさ、さっさと日本に帰って、どうせアンナとおすしでも食べに行くんでしょ」

(何でわかったの?)

「何でわかったの?って顔してる!やっぱりね。」

「とにかく、ママは明日から大連に行ってコンサートしてくるから、2日間ここに慣れるように頑張っててね!」

「ぅえ~ん!!嫌だよお、私も大連に行く~」私の胸に顔を埋めて号泣し始めた。

しつこい性格だのなんだのと言っても、心の中は私も辛い。気をゆるめると、私も泣いてしまう。

前日は「じゃあね」と、言ってドアを閉め寮の階段を下りて行こうとしたら、沙羅が階段を駆け下りてきて追いかけてきた。辛くて、後ろを振り向けなかった。

今日は号泣。泣き声は段々大きくなってゆく。

(どうしよう・・・。本当にこのまま置いていって大丈夫なのかしら・・・。病気にでもならないだろうか)

すると、ずっと沙羅の顔を覗きこんでいたアンナが呟いた。

「お姉ちゃん、笑ってる・・・」

「えっ??」

「ママ、お姉ちゃん声は泣いてるけど、涙出てないよ。お顔が笑ってる」

沙羅、恐るべし!今日のは泣きまねだった!泣くのもいいかげん疲れたのだと。

「だってぇ、甘えたかったんだもん!じゃあ、ママ、大連でがんばってね。おみやげも忘れずに!」

                 ・・・・続く
                                                Hiroko